ドライバーの方々が常に注意しておくべきこと。それは「交通事故」への対応です。交通事故は事故の相手方・警察・保険会社とのやりとりのほか、修理・ケガの治療とやるべきことがたくさんあります。
ただし、一般的な事故である場合には対応方法がはっきりしていることも多く、事故の相手方と揉めない限りは時間はそれほど多く取られないことがあります。
問題は、相手が不誠実な対応をとってきたとき。特に、相手が「任意保険に加入していない」という場合には、そもそも自賠責の範囲外の賠償などの手続きが難しくなります。
そこで今回は、もしもあなたが任意保険未加入の相手と事故を起こしてしまったら…というケースを想定した対処法をご紹介していきます。
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交通事故の基本|交渉・請求は保険会社と弁護士に依頼する
無保険車との交通事故に限らず、交通事故が我が身に降りかかった時には必ず事故の相手方・警察・保険会社、場合によっては弁護士などと関わることになります。
特に、事故後の手続きで関わることになるのは自身が加入する保険会社と、弁護士になります。
保険会社の対応
事故を起こすと「過失割合」が自身の契約する保険会社と相手方の保険会社の間で話し合われ、その割合に基づいて保険金額が決定します。
交通事故の過失割合とは、発生した交通事故に対する責任(不注意、過失)の割合のことです。当事者双方に過失のある事故の場合、通常は当事者が契約している保険会社の担当者が話合い、過失割合を決定します。
あなたにまったく過失がない(過失割合 自分:相手=0:10)場合には、保険会社は示談交渉を行うことはありません。(弁護士法第72条)
しかし、あなたに事故の過失があったとされた場合には、保険会社が示談交渉を行ってくれます。相手方に何らかの損害がある際には、それを保険で支払うことになります。
事故後には必ず保険会社に連絡を取りましょう。
弁護士の対応
相手に過失があるのにも関わらず支払いを拒否する場合や、あなた自身が示談交渉をしなくては行けない場合には、弁護士に依頼して物損の損害額の請求を依頼します。
しかし、弁護士費用が物損の損害額を一般的に上回ることが多いために、一般的な依頼では拒否されてしまうことになります。
ただし、その場合でも保険会社の「弁護士費用特約」を利用することで、弁護士費用を保険会社に支払ってもらうことが可能です。
ご契約者、そのご家族またはご契約のお車に搭乗中の方などが、自動車に起因する人身被害事故や物損被害事故に遭った場合に、相手方に損害賠償請求を行う場合に生じる弁護士費用や、法律相談をする場合の費用をお支払いします。
弁護士費用特約を利用することで、物損・人身被害の請求や法律相談などの費用を肩代わりしてもらうことができます。
相手が連絡を無視する・後から主張を変えるなどをしてきた場合の対応には時間的・精神的な負担がかかります。無理に自分で何とかしようとするのではなく、特約を利用して弁護士に依頼しましょう。
交通事故が発生した場合、特に対応に困るのは任意保険に未加入の相手だった場合です。この際の手続き・対処法について解説していきます。
ケース別!任意保険未加入の相手との交通事故の手続き・対処法
「相手が無保険車だった場合の交通事故の対応」をケース別に解説していきます。
ほとんどの場合、相手方とスムーズにやりとりするのが難しくなる前提で対応することになると思いますので、下記のケースごとに対応方法を知っておきましょう。
1 自分が車両保険に加入しており、車の修理のみのケース
任意保険は「任意」となっていますが、交通事故による賠償金は自賠責保険だけでカバーリングできることのほうが少ないです。そのため、あなたも任意保険へ加入していることと思います。
相手方が任意保険に未加入であることがわかった時点で、事故に対する客観的な対応やリスクへの考え方ができない相手であることを前提として対応したほうが良いです。
たとえば、あなたが車両保険に加入しており、停車中の車に相手方からぶつけられたケースを想定します。
弁護士費用特約
この場合、あなたの車の修理費用を相手方に請求することになりますが、相手方は支払いを拒否するか、連絡を取らないという行動に出るケースがあります。
この場合は、賠償金を請求するために弁護士に依頼します。物損では弁護士に依頼するのは難しいですが、冒頭でご紹介した弁護士費用特約に加入している場合は依頼することができます。
もし弁護士費用特約に加入していない場合は、「少額訴訟を行う」「自分の車両保険を使う」の2つの対応策があります。
少額訴訟を行う
請求する金額が60万円の場合に利用できる「少額訴訟制度」を利用し、1日判決・費用1万円で訴訟を行うことができます。相手の財産を差し押さえし、判決は10年間有効なものとなります。
ただし、保険会社に手続きしてもらう場合と比較し手間がかかります。最後の手段として考えておいた方が良いでしょう。
自分の車両保険を使う
自分自身の車両保険を使用して車の修理費用を支払う方法です。
自分の保険を使うため、「割引等級が下がる」「自己負担金額が発生する場合がある」の2つのデメリットがあります。
しかし、車両保険会社はその金額を相手方に請求することになるため、あなたがそれ以上手間をかける必要がなくなります。
2 任意保険未加入車との交通事故で自分が負傷したケース
任意保険無保険車との交通事故であなたが負傷した場合は、相手の自賠責保険で120万円までの治療費を支払ってもらうことができます。
そのため、任意保険の適用がない場合でも、治療費が支払われないということは基本的にありません。
また「相手とまったく連絡が取れない」といった場合には、「人身傷害保険」という制度を使うことができます。
人身傷害保険を使う
人身傷害保険を使うことで、治療費などの損害額を自分自身の保険から支払うことが可能です。
実際にかかった治療費、休業損害などの損害額を約款に定められた基準に従い当社で算出し、保険金額を限度にお支払いする保険です。
物損による自分の保険適用とは異なり、割引等級のデメリットはありません。(ノーカウント事故とされます。)また、搭乗者傷害保険にも加入している場合は、その保険金額も受け取れます。
「被害者請求」
自分の自賠責保険から治療費を請求することも可能です。
加害者側から十分な賠償を受けることができない場合に、最低限の賠償を、被害者自ら請求することもできます。これを〔被害者請求〕といいます(自動車賠償責任保障法第16条請求)。
しかし、この被害者請求は提出書類が多く煩雑です。あなたの車両保険に人身傷害保険が含まれているなら、そちらを利用することをおすすめします。
参考として、国土交通省の被害者請求に必要な書類一覧が掲載されているページをご紹介しています。
参考:支払までの流れと請求方法 – 自動車総合安全情報(国土交通省)
まとめ|無保険車への対応は迅速かつ確実に行う
今回は、交通事故がおきた時の対処法とやるべきこととして、保険会社の利用方法や弁護士への依頼方法を実際に行う内容やケース別に解説しました。
相手が保険に入っていなかった場合には、通常の交通事故よりも手続きが煩雑になったり、通常では気にしないものに関して留意しながら請求を進める必要があります。
また、任意保険に加入していない相手方は対応が遅かったり、不誠実なケースも多いため、迅速かつ確実に対応できるよう準備しておきましょう。