「交通事故」は、この車社会で最も身近な「命の危険」です。あなたも、日々ニュースで取り上げられている凄惨な事故の知らせを聞いていることでしょう。
しかし、凄惨な事故であればあるほど「明日は我が身」と考えることは結構難しいものです。また、事故の被害にあった場合の対処法や流れをスムーズにイメージできる人も少ないはず。
もしあなたが明日事故にあったら…あなたはどう対応するでしょうか。
今回は、交通事故にあった後、あなたが対処すべき「賠償金」について解説します。あなたが事故後、どんな機関・方法を使って行動すれば良いのか、ここでまとめてチェックしておきましょう。
交通事故の被害にあった直後の対応策は、下記記事でもご紹介しています。
INDEX
交通事故の被害にあった後の大まかな流れ
事故にあった直後にすべき行動
交通事故にあった直後の動きについては「交通事故に合ったとき、最初に取るべき行動・NG行動とは?」の記事でもご紹介していますが、ここで簡単に流れを把握しておきましょう。
- 相手の氏名・住所・連絡先の確認をおこなう
- すぐに警察へ連絡する
- 現場では相手とのやり取りを録音し、状況を撮影する
- 目撃者がいる場合に協力を依頼する
- 相手が入っている自動車保険を確認する
- 自分が入っている保険会社へ連絡する
- 体の異常が少しでも起きたらすぐに病院へ行く
基本的には、みなさんがイメージしている通りの流れになりますが、特に重要なのは保険会社へ連絡するまでの行動になります。
示談では終わらず裁判に発展する場合、事故に関してできる限り情報収集しておくと、後から様々な面で役立ちます。
ただし、事を有利に運ぶため嘘の内容を警察に話すなどすることはNGです。あくまでも冷静に事実を述べることが大切になります。
事故後は必ず保険会社へ連絡し、その後の手続きの説明を受けましょう。その際に、下記の賠償金の内訳をよく理解しておくことで、事故後の手続きや精神的負担を軽くすることができます。
後遺障害申請手続きを行う
交通事故でけがをした場合の治療費は、保険会社との合意の上で慰謝料を請求することができます。
慰謝料は、「治療完了後」に請求することになりますが、その際に注意すべきなのが「治療が長引いた期間」です。
「交通事故から6ヶ月以上になっても痛みが残っているケース」では、”後遺障害申請”と呼ばれる手続きを行うことができます。この後遺障害申請は、「自賠責損害調査事務所」と呼ばれる調査機関が独自に行うもので、地域ごとに管轄があります。
事故後は自賠責保険会社にも連絡することになりますが、この申請手続きは自身で行う必要があるので、交通事故にあった後にはけがの経過を見て申請準備をします。
治療を進め、半年以上も痛みやけがが完治しない場合は、この申請手続きを行います。
後遺障害申請は、下記でご紹介している賠償金の話の密接に関わっていますので、必ずこのような手続きがあるということを覚えておきましょう。
交通事故後に受け取れる賠償金の内訳
交通事故後に後遺障害申請を行うことで、保険会社から賠償額が提示されます。その際、内訳をよく確認するのはなかなか骨が折れる作業です。
そこで、ここでは賠償金と一般的に呼ばれるものの内容と注意点に関して解説しています。ここの解説を参考に、提示された賠償額に関してチェックしましょう。
1 後遺障害慰謝料
「後遺障害慰謝料」とは、交通事故によるけがを原因として後遺症が残った場合に支払われる慰謝料です。
後遺症は「等級」で分類されており、後遺症がどの程度なのかによって、支払われる基準となる金額が変化します。
等級ごとに支払われる金額は保険会社の基準と、裁判の判例として弁護士が基準とする基準が多く異なります。
後遺障害の等級 | 保険会社 | 判例 |
---|---|---|
1級 | 1100万円 | 2800万円 |
2級 | 958万円 | 2370万円 |
3級 | 829万円 | 1990万円 |
4級 | 712万円 | 1670万円 |
5級 | 599万円 | 1400万円 |
6級 | 498万円 | 1180万円 |
7級 | 409万円 | 1000万円 |
8級 | 324万円 | 830万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
上記表の金額はあくまでも相場であり、自分自身がどこに分類されるかをチェックする必要がありますが、それと同時に、金額が本当に適正なのかは弁護士に相談することをおすすめします。
「弁護士費用特約制度」を利用することができれば、弁護士が支払いを行う加害者側の保険会社と交渉・裁判をする費用を自身が加入する保険会社が肩代わりしてくれます。
弁護士費用保険は、「自動車保険の特約で加入する」「火災保険・医療保険の特約で加入する」「弁護士費用保険単体で加入する」の3つの方法があります。
まずは、あなたが今契約している保険に特約が含まれているのかどうかをチェックしておきましょう。
2 後遺障害逸失利益
「後遺障害逸失利益」とは、交通事故による後遺症を原因として、仕事が以前と同じようにできなくなった場合に対する補償になります。
後遺障害逸失利益は「仕事がまったくできなくなった」といった重い状態でなければ請求できないというわけではないため、注意が必要です。
後遺症が逸失利益では、原則として「自己の治療を終えた日から67歳になるまでの年数」に、骨折(7年〜10年程度)、むちうちによる痛み(3年〜5年程度)とされています。
後遺障害逸失利益で問題になるのが、「将来の仕事への支障に対する補償が何年分支払われているか」です。
この点について、判例などを前提にした正しい年数は以下の通りです。
年数により67歳まで補償される場合もありますが、保険会社により賠償額とその年数が変更されている場合があるため、こちらも原則をもとにチェックしておきましょう。
また、会社員だけではなく専業主婦の場合も認められます。そのため、保険会社から提示された補償額には必ず目を通しておくことが大切になります。
3 休業損害
「休業損害」とは、交通事故を原因として仕事を休むことになったことに対する補償額のことです。これまでご紹介してきたもののうち、最も該当する可能性のある損害です。
あなたが交通事故によるけがで仕事を休んだ場合、その日に支払われるべきだった給与が支払われないことになります。また、有給休暇を使った場合も支払いを請求可能です。
また、後遺障害逸失利益と同様に、専業主婦の方も請求することが可能になります。保険会社から提示された内訳をチェックしておきましょう。
4 労災保険(労働災害保険)
まず、あなたが通勤中や勤務中に交通事故にあった場合は、保険会社からの賠償とは別に、労災保険からもお金が下りるケースが多いです。特に覚えておいていただきたいのは、労災には「特別支給金」という制度があることです。
例えば、あなたが通勤中や勤務中に交通事故にあって仕事を休まなければならない場合、労災から「休業特別支給金」という補償を受けることができます。この休業特別支給金はあなたの給料の額のおよそ2割にあたる額です。
そして、この休業特別支給金は、あなたが相手の加害者の保険会社に、休業損害の請求をしていたとしても、それとは別に請求ができる制度になっています。
そのため、利用することによるメリットが大きい制度ですが、あなたが申請をしないともらえませんので、ぜひ覚えておいてください。
5 障害年金
障害年金は保険ではなく国の制度になりますが、後遺障害逸失利益と同じ文脈で、「後遺症」に関して考えておく必要があります。
重い後遺症が残るけがが事故をきっかけに残ってしまった場合は、「障害年金」を国から支給してもらうことができます。
まずは治療に専念することが重要ですが、保険関係の手続きだけではなくその後の障害年金の手続きについても、治療の経過を見て知っておきましょう。
障害年金の申請方法や受給資格に関しては、「障害年金サポートサービス」が参考になります。
参考:障害年金サポートサービス
6 無保険車傷害特約
相手方が自動車保険に加入していなかった場合の交通事故では、相手が任意保険に加入している場合と比べて請求できる金額が減ってしまうことがあります。
その際に、自身の保険会社から「本来相手方の保険会社が支払うべき金額」を代わりに請求することができる制度が「無保険者障害特約」と呼ばれる制度です。
無保険者障害特約制度は加入していること自体を忘れていたり、特約が外されていたりする場合があります。相手方が保険に入っているかどうかはいくら注意しても変えることはできませんので、加入しておくべきです。
家族が加入していれば被害者家族が利用できる条件になっている場合が多く、「車 対 車」以外の事故であっても利用することができるため、保険の契約内容をチェックしておきましょう。
まとめ|万が一を想定したカーライフを送る
今回は、交通事故にあった後に必ず手続きを進めることになる「賠償金」の内訳とチェックポイントについて解説してきました。
事故の被害にあったあとにも各種手続きを済ませる必要がありますが、自分自身や家族が事故にあった後は冷静でいるのが難しい場合が多いです。
そのため、今のうちから今回ご紹介した内容を頭に留めておくかメモをとっておき、冷静に対処できるよう準備しておくことをおすすめします。
「万が一」を想定して、カーライフを送りたいものですね。